鳥取県米子市百塚88号墳の保存を求める要望書

 文全協は12月9日付けで、鳥取県米子市百塚88号墳の保存を求める要望書を関係機関に提出しました。百塚88号墳は、横穴式石室を有する全長26mの前方後円墳です。産業廃棄物最終処分場の建設にともない発掘調査されましたが、「記録保存」の名のもとに破壊される運命にあります。
 文全協はこの古墳の保存を求めます。残せる古墳、残すべき古墳です。ご支援、ご協力をお願いします。
                                                                               2020年12月9日
文化庁長官 宮田亮平様
鳥取県知事 平井伸治様
米子市長 伊木隆司様
                               文化財保存全国協議会
                                 代表委員 小笠原好彦
                                     橋本 博文

   鳥取県米子市百塚88号墳の保存を求める要望書

 鳥取県米子市淀江町小波地内に所在する百塚古墳群は、総数122基からなる大型の古墳群であり、弥生時代から奈良時代にいたる集落遺跡である百塚遺跡群とともに、淀江平野の貴重な歴史遺産です。また、国内最大級の弥生時代集落であり、古墳時代につながる墳墓が営まれた国史跡・妻木晩田遺跡にも近く、妻木晩田遺跡の後の淀江平野周辺の歴史の動向を考えるうえで注目される古墳群です。
 なかでも百塚88号墳は、古墳群内に現存する唯一の前方後円墳(全長26m)です。2020年6月からは、産業廃棄物最終処分場の建設工事に伴う発掘調査が実施され、古墳時代後期後半(6世紀後半)に位置づけられる横穴式石室・石棺と、鳥形の装飾をもつ須恵器がみつかっています。また、その墳丘には、全国的にも珍しく、妻木晩田遺跡で確認されたものと共通性の高い「土のう積み」の工法が確認でき、古墳の築造過程を知るうえでも貴重な成果が得られています。
 この古墳について、鳥取県および米子市当局は、10年前に実施した試掘調査の結果にもとづき、当初より「記録保存」をするという方針で、このたびの発掘調査を実施し、すでに墳丘の一部を削平し、横穴式石室・石棺は解体され、発掘調査も終了しています。そして、墳丘が残存した状態で、開発業者に引き渡すとのことです。
 しかし、この産業廃棄物最終処分場建設計画は、昨年秋に鳥取県知事が地下水への影響についての再調査を命じ、「調査の結果次第では、計画を白紙に戻す可能性がある」と定例記者会見で発言しています。そして、その調査結果がでるのは、来年の秋ということです。すなわち、本古墳にかかわる開発事業の実施がいまだ正式決定していない今の段階で、「記録保存」のための発掘調査がおこなわれたことは、文化財保護行政のあり方として、きわめて不適切であり、遺憾な判断であったと言わざるを得ません。加えて、今回の発掘調査によって、土のう積み工法という新たな知見が得られたことをふまえ、「記録保存」という方針は、見直されるべきものと考えます。
そのため、私たちは次の2点を強く要望いたします。

1.すみやかに現存する古墳の墳丘の保護措置をおこなったうえで、すくなくとも事業計画が正式決定するまでの間、古墳の保存・活用を視野にいれた協議をおこなうこと

2.文化財保護の原点に立ち戻り、地域の特質を物語る古墳の保護・活用をはかること

2020年12月09日