文全協による要望・声明

奈良市菅原遺跡の現地保存を求める要望書

                               2021年5月24日
文化庁長官 都倉俊一 様
奈良県知事 荒井正吾 様
奈良市長  仲川げん 様
奈良市教育委員会教育長 北谷雅人 様
三都住建株式会社 代表取締役 五十嵐直秀 様
                             文化財保存全国協議会
                               代表委員 小笠原好彦
                               代表委員 橋本博文
                             奈良歴史遺産市民ネットワーク
                               事務局長 小宮みち江

   奈良市菅原遺跡の現地保存を求める要望書

 特別史跡・平城宮跡の朱雀門を出て、目の前の二条大路を東へ向かえば東大寺があり、西へ向かえば東大寺の大仏建立を指揮した行基(668-749)ゆかりの喜光寺(菅原寺)があります。その喜光寺を見下ろす西側の丘陵上にあるのが菅原遺跡(奈良市疋田町)です。1981年の奈良大学による発掘調査で、「仏堂」とみられる建物の基壇が見つかっており、奈良時代の寺院跡であることが知られていました。
 2020年12月にはこの遺跡で、大規模な回廊に囲まれた中心建物跡が発見されました。2021年5月20日付けで発表された報道資料等によりますと、これは柱穴が円形にめぐる類例のないもので、多宝塔や八角円堂のような円堂建築と考えられることから、供養塔として使われていた建物とみられます。みつかった瓦や土器の年代から、8世紀半ば頃の創建とみられます。また、この遺跡は、菅原寺の西の岡にあったと『行基年譜』の最後に記す「長岡院」に比定されています。そうするとこの円堂は、大仏開眼の3年前、82歳で亡くなった行基に対する廟もしくは供養塔として建立された可能性があります。この円堂跡に立つと、東にむかって二条大路がまっすぐ延び、そのむこうに東大寺大仏殿の甍、若草山・春日山の山並みがよく見えます。名僧・行基を偲ぶ供養塔としてふさわしい景観といえます。
 このように、考古学的にも優れた調査成果が得られたことに加え、行基という歴史的人物を物語る重要遺跡であることが確実となった菅原遺跡は、国史跡に相当する価値を有していると評価されます。
 ところが、開発業者と奈良県当局による協議の結果、住宅開発のための「記録保存」をおこなった後、市民に現地公開されることもなく、破壊される運命にあるとも報道されています。私たちは文化財保護の立場から、現状を容認することはできません。上述した遺跡の重要性を十分に勘案したうえで、その価値を末永く後世に伝えるため、まずは住宅地内の緑地として現地保存し、将来的には、市民の誇るべき遺産として整備・活用されるべきと考えます。そのうえで、次の2点を強く要望するものです。

1、菅原遺跡の回廊及び中心建物をできる限り現地保存し、これ以上破壊が進行しないようにすること。
2、菅原遺跡の現地保存を前提として、住宅開発と調和的な遺跡の整備・活用をはかること。

2021年05月24日

安芸市瓜尻遺跡の保存と活用を求める要望書

                                 2021年5月23日
文化庁長官 都倉俊一 様
高知県知事 濵田省司 様
高知県教育委員会教育長 伊藤博明 様
高知県議会議長 森田英二 様
安芸市長 横山幾夫 様
安芸市教育委員会教育長 藤田剛志 様
安芸市議会議長 尾原進一 様
                              文化財保存全国協議会  
                                  代表 小笠原好彦
                                  代表 橋本 博文

   安芸市瓜尻遺跡の保存と活用を求める要望書

 安芸市瓜尻遺跡は、7世紀代の中央政権による地方経営の実態を解明するうえで、その遺構を良好に遺している全国的にも数少ない貴重な古代遺跡です。
 発掘調査によってみつかった掘立柱建物跡、総柱建物跡や円面硯、刀子からは倉庫群を含む官衙的性格が、また方形区画とその内側に巡る柱穴列に囲まれた井戸跡と建物跡からは「聖なる空間」での国家的祭祀の執行が窺えます。また、交通の往来を示す運河跡や入り江状の波止場跡、それに西側未調査区に推定される寺院跡をあわせると、仏教伝来や国家的祭祀の執行、官衙の設置など、大化改新(645年)、白村江の戦い(663年)、壬申の乱(672年)といった教科書にある7世紀代の歴史的な出来事が反映された遺跡だと考えられます。
 これらにはこの地域が古代国家に組み込まれていった様相が示されており、その具体的歴史像が安芸平野の瓜尻遺跡において確認されたことは、古代国家形成過程を追究するうえで極めて重要で、学術的に高く評価できます。また、このような寺院跡、祭祀跡、運河・波止場跡、官衙跡といった複数の要素で一体的に構成される7世紀代の遺跡は、高知県内はもとより、全国的にも例がなく、その希少性も積極的に評価すべきです。そして、これらの評価に基づいて、高知県および安芸市当局は、瓜尻遺跡を県民・市民の宝として恒久的に保存し、その価値を高めるために活用する責任があると考えます。
 この遺跡は津波災害を想定した中学校移転を目的に発掘調査をはじめたと側聞しています。しかし、調査によって検出された遺構の遺存状態が極めて良好なことがわかりました。このように遺存状態が良く、他に例がない貴重な遺構を破壊して校舎建設用地とするよりは、現状保存し、未来を担う子どもたちの身近な歴史教材として、また地域の皆さんに末永く愛される史跡公園として隣接する寺院跡を含めての整備・活用が望まれます。さらに瓜尻遺跡を広く人類共有の文化遺産として捉え、観光資源として活用することも将来にわたる地域経済活性化の活力として期待されるところです。その意味で災害回避と文化遺産保存との両立を目指した、全国に先駆けた模範となる判断と取り組みが期待されます。
 このように瓜尻遺跡は、7世紀代の地方における古代国家形成期の具体的様相を示す遺構群が良好に遺された重要かつ希少な遺跡であり、特に重要な遺構群の現状保存によって地域での歴史学習や、観光資源としての活用が待望される文化遺産です。貴機関におかれましては、まずはこのような瓜尻遺跡の調査成果を正しく認識し尊重したうえで、史跡指定など、現状保存のための適切な措置と、将来を見据えた活用施策を採られますよう、強く要望いたします。
                                    以上

2021年05月23日

高輪築堤跡の全面保存を求める声明

                                  2021年4月30日
  高輪築堤跡の全面保存を求める声明

                              文化財保存全国協議会  
                                代表委員 小笠原好彦
                                     橋本 博文

 東日本旅客鉄道会社(以下 JR 東日本)の「品川開発プロジェクト」 にともなう事前の発掘調査によって明らかになった高輪築堤跡について、私たち文化財保存全国協議会は、日本歴史学協会による「『高輪築堤』の保存を求める要望書」に賛同団体として参加し、その全面保存を求めているところです。同要望書では、日本近代史を象徴する貴重な歴史遺産として高く評価し、現地保存と国史跡指定を求めています。また、2月に現地を視察した萩生田光一文部科学大臣も「明治期の近代化を体感できる素晴らしい文化遺産」であると述べ、開発と保存の両立を求めています。
 しかし、その後の4月10日に、発掘調査が進む4街区において日本初の鉄道信号機跡などをも含む新たな成果が限定的に公開されたものの、4月21日には公園隣接地及び「第7橋梁」を含む一部の遺構の現地保存、「鉄道信号機跡」の移築保存、それ以外の遺構は記録保存とする見解が、JR 東日本によって示されました。
 この間、日本考古学協会会長による度重なる声明の発出など、ことの推移を注視してきましたが、4月21日にJR 東日本が示した見解は、高輪築堤跡の歴史的評価を認めつつも、1000m以上に及ぶ発掘調査対象範囲のうち1割にも満たない、わずか120mの現地保存との結論であり、日本の近代化を象徴する文化遺産の大半が破壊されようとしている事態を看過することはできません。とりわけ築堤跡と一体的に存在する「鉄道信号機跡」の移築保存は、遺構の破壊を前提とする方針であり、歴史的景観を無視した愚行と言わざるを得ません。
 文化財保存全国協議会は、日本国有鉄道(「国鉄」)からの自らのルーツ、ひいては日本鉄道史を軽視するJR 東日本の認識や態度に強く抗議するとともに、遺構の破壊を前提とした計画の撤回を強く要望します。
 また、これまでの発掘調査成果とともに4街区の調査成果を広く公開し、高輪築堤跡全体の保存と活用に向けた取り組みを改めて求めます。

2021年04月30日

大社基地遺跡群の保存および活用を求める要望書

                                  2021年4月20日
文化庁長官 都倉俊一 様
島根県知事 丸山達也 様
島根県教育委員会教育長 新田英夫 様
島根県議会議長 中村芳信 様
出雲市長 長岡秀人 様
出雲市教育委員会教育長 杉谷学 様
                               文化財保存全国協議会
                                  代表 小笠原好彦
                                  代表 橋本 博文

   大社基地遺跡群の保存および活用を求める要望書

 島根県出雲市の大社基地遺跡群は、アジア・太平洋戦争当時の海軍航空基地として、その遺構を良好に遺している全国的にも数少ない貴重な戦争遺跡です。大社基地遺跡群には、現在でも主滑走路のおよそ半分が往時の姿で遺存するほか、その周辺に配備された爆撃機「銀河」の掩体壕、爆弾や魚雷を格納した地下壕、兵舎跡、対空機銃陣地跡、基地設営隊本部が置かれた旧出西国民学校校舎などが遺されています。また大社基地の造営を担った舞鶴海軍鎮守府所属第 338 設営隊の戦時日誌には、特攻兵器である「桜花」の格納庫を設けるなど、アジア・太平洋戦争末期の本土決戦に備えた西日本最大の軍事拠点となっていた姿が記されています。
 このように、大社基地遺跡群は、主滑走路と附属施設が建設当時の原状をよく留めた大規模な海軍航空基地であり、あわせて関連する史資料が豊富なことから、戦争遺跡として全体像の把握が可能な全国的にも稀な貴重な文化財と評価できます。特に、幅60m、長さ1500mに及ぶコンクリート製の主滑走路遺構は、兵庫県加西市の海軍鶉野飛行場跡の規模を上回り、敗戦後 75 年を経た今日において他に類を見ないものです。そして、その主滑走路や掩体壕などの遺構が地域住民により学校教育、社会教育で活用され、戦争の実態や雰囲気を伝える体験的平和学習の場として寄与しています。
 しかし、大社基地遺跡群の主要構成遺構である主滑走路の大部分が民間に売却され、落札者が確定したとの報道に接しました。また4月初めには、主滑走路の一部で現状変更がはじまったとの知らせもありました。戦争遺跡として全国的にも稀有な存在で、島根県を代表する貴重な文化財であり、すでに平和学習に資しているにもかかわらず、その中心的な遺構が失われることを私たちは強く危惧します。むしろ、これらの遺跡群の総合的な学術調査に基づいた一体的な保全と活用が将来に向けて望まれます。とりわけ、特攻兵器「桜花」配備に関連する歴史的背景やそれを裏付ける遺構の確認など、史資料を駆使した学術的なアジア・太平洋戦争末期の海軍基地の実態把握は、本土決戦に備えた基地の役割や作戦の在り方を鮮明にし、より具体的な戦争の実相とそれに巻き込まれた民衆の実像に迫りうるもので、全国的にも例のない平和学習への更なる寄与が期待できます。
 もとより島根県は「島根県文化財保存活用大綱」を策定しており、本遺跡群についても大綱で謳う基本理念や取り組みに則った保存活用が望まれます。
 大社基地遺跡群は、アジア・太平洋戦争末期の海軍航空基地に関わる建物や遺構を多く遺し、地域での平和学習にも活用されている全国的にも希少な文化財です。貴機関におかれましては、まずはこのような現状を認識し尊重しつつ、主滑走路を中心とする本遺跡群の史跡指定など、現状保存のための適切な措置と将来の活用にむけた施策をとられますよう、私たちは強く要望いたします。
                                      以上

2021年04月20日

太田市立藪塚本町歴史民俗資料館の存続に関する要望

                              2021年3月22日
太田市長    清水聖義様
太田市教育長  恩田由之様
太田市議会議長 久保田俊様

                           文化財保存全国協議会
                             代表委員 小笠原好彦
                             同    橋本 博文

   太田市立藪塚本町歴史民俗資料館の存続に関する要望

 御地太田市は、東日本最大の前方後円墳、太田天神山古墳や単独の埴輪では唯一の国宝、太田市飯塚出土挂甲武人埴輪(東京国立博物館所蔵)、北関東の古墳時代前期の指標となる石田川遺跡出土土器群など、国内外に誇る埋蔵文化財を多く有することで知られています。その貴市では、当然あってしかるべき考古学系の博物館として市町村合併前の個人寄贈の藪塚本町歴史民俗資料館のみを受け継いできました。
 ところが、このたび施設の老朽化や障がい者に利用しづらいこと、新型コロナ禍での歳入減が心配される財政事情の中での来館者増が見込めないことを理由に、ごく限られた地元(旧薮塚本町でも『湯之入』・『三島』地区)の区民のみに一方的に資料館の閉館のおしらせを回覧させました。それに危機感をもった地元、東毛考古学サークルはにわの会では、資料館の存続を願う要望・陳情書を2021年1月21日付けで貴職宛に提出しました。その中で、廃館の撤回と太田市文化財保護審議会が閉館と決した議事録の公開、市民のパブリックコメントを募集することなどを要望しています。
 その後、マスコミでは地元紙、上毛新聞が同年2月10日付け朝刊で「郷土史伝える場廃館」「地元団体見直し訴え」の見出しで報道し、朝日新聞も同月26日付け群馬版で「太田歴史民俗資料館利用低迷で廃館方針―考古学者ら「待った」」の見出しで報じました。そこには、市側からの回答にある廃館後の資料の、近世尊皇攘夷思想家を顕彰する施設、高山彦九郎記念館への移転・間借り展示への批判が掲載されています。
 一方、これらマスコミの報道を受けた県民・市民は敏感に反応し、地元紙、上毛新聞の3月2日付けの「待ってほしい歴史資料館廃止」や同紙3月6日付けの「藪塚の資料館廃館を憂う」などという館の存続を願う声を寄せています。
 それに続く上毛新聞3月9日付けでは「市議会委員会で廃館の経緯報告」と題して、市議会市民文教委員会協議会で「パブリックコメント」を実施すべきだという委員の意見に対して、市は「今回は廃館の報道後も反論の声が出ていない」と述べ、実施しないとしたと報じています。
 以上の一連の経緯は、行政が市民の声を無視し、黙殺しているとしか言いようがありません。そもそも合併後、太田市は当館の改修などにお金を掛けず、バリアフリーや入館者増のための取り組みを怠り、努力義務を果たしていません。
 そこで以下、別紙資料を添えて要望します。
1.資料館の廃館を見直し、存続を図ること。
2.施設を利用し易くするための改修を図ること。
3.名称を全市的な施設として「太田市考古・民俗資料館」とすること。
4.今後の運営のため、識者に地元小中学校関係者、PTA、マスコミ関係者、観光関係者、市民(公募を含む)などを加えた運営協議会を組織すること。
5.館活動の活性化のため市民ボランティアの制度を導入すること。
 今後、当館が文化の発信、学び、観光の拠点として、地域に誇り・夢・活気を与える施設として発展することを切望します。

2021年03月22日

「高輪築堤」の保存を求める要望書

  「高輪築堤」の保存を求める要望書

関係機関各位

 東京都港区における東日本旅客鉄道会社(以下JR東日本)の「品川開発プロジェクト」にともなう発掘調査によつて、1872年(明治5)に開業した日本最初の鉄道の遣構である「高輪築堤」が発見されたという情報は、全国的に大きなインパクトをもって伝えられました。

 遺構の保存等については、発見時に所在地にあたる港区教育委員会がその重要性に基づき、事業者であるJR東日本に対して現状保存を要請したと伺っております。その後、有識者と関係者による「調査保存等検討委員会」が立ち上がり、保存をめぐり様々な議論が交わされているとも聞き及んでおります。それに並行して、産業遺産学会、日本考古学協会(埋蔵文化財保護対策委員会)が遺構の保存を求める要望書を提出し、別途、鉄道史学会・都市史学会・首都圏形成史研究会・地方史研究協議会・交通史学会も連名で、遺構の保存や公開を求める要望書を提出するという状況となっています。このような諸学会の動向からも、「高輪築堤」の保存を願う声は日増しに広がってきていることがわかります。

 わが国の歴史学系学会の連合組織である日本歴史学協会は、諸学会のこうした要望を全面的に支持することを表明するとともに、新たに、賛同学会と連名で「高輪築堤」の保存を求める要望書を出すことにしました。
 まず、「高輪築堤」の歴史的評価については、日本の近代化を牽引した創業期の鉄道の姿を目の当たりにすることができる貴重な遣構であること、産業史・鉄道史・交通史などの分野に留まらず、日本近代史を象徴する、重要な歴史遺産であるということに異論はないものと思われます。工学・技術史的な側面では、イギリス人技師の指導による西洋の鉄道建築の技術に、日本で受け継がれてきた手法が融合した、ハイブリットな構造物であるという特徴が認められます。とくに、第7橋梁部と周辺の水路跡については、その希少性に加えて、保存状況の良好さも評価されており、遺構全体の中でも重要な部分に位置づけられています。このような学術的価値の高さという点から判断すると、「高輪築堤」の現状保存を確実に行い、すみやかに国史跡の指定にむけた対応を取る必要があります。

 「高輪築堤」に対する注目は非常に高く、遺構の行く末や、保存の対応の方向性次第によっては、大きな反響が巻き起こることも予想されます。わたしたちは、「高輪築堤」遺構の保存・活用と地域開発との共存が、関係当事者間での協議や調整によつて解決され、現実となることを願い、以下の点を要望いたします。

 (1)開発プロジェクトの事業主体であるJR東日本に対しては、国有財産を日本国有鉄道から継承した事業者としての立場から、「高輪築堤」遺構が国民共有の重要な財産であることを十分に認識すること

 (2)「高輪築堤」が、場所性と高く結びついた文化財である「史跡」としての価値が十分認められる点を考慮し、移設保存の方針を改め現地保存すること

 (3)国史跡の指定に向け、国・都・港区などの関係者との協議や調整などの対応を図ること

 なお、「高輪築堤」は、1996年(平成8)に国史跡に追加指定された新橋横浜間鉄道の遺構である「旧新橋停車場跡」の延長線上にあり、新橋停車場と価値を同じくする貴重な遣構です。そのため、今後は「旧新橋停車場跡」とあわせた保存・活用を行う必要が生じることが想定されます。「旧新橋停車場跡」の国史跡への追加手続きに際しては、所有者であるJR東日本がその文化財的価値を認め、必要な手続きに入り、国史跡に追加指定されています。 JR東日本は「高輪築堤」に関しても、「旧新橋停車場跡」と同様の判断と保護措置を取るよう強く要望します。
 もちろん、期限の定まった開発事業を進めていく中での緊急対応となれば、苦慮する場面も多々あるものと推察いたします。その中での、遺構の保存を前提とする、設計変更も含めた開発事業の見直しという判断は、後年、文化財の保存・活用と開発を両立させた事例として大きく評価されるものになるのではないかと考えます。英断を求めます。

 すでに、本年2月16日には、萩生田光一文部科学大臣が現地を視察し、「高輪築堤」を「明治期の近代化を体感できる素晴らしい文化遺産」であると述べ、都市開発の現状に一定の理解を示しながらも、遺構の現地保存との両立を前提とする、国史跡指定の方向性と国の支援に言及しています。この大臣発言は、非常に重要であり、国による「高輪築堤」遺構に対する方針の提示と今後の対応策を示したものと理解いたします。
 万一、交渉が途切れ、歴史上重要な「高輪築堤」が取り除かれるというような事態を招けば、文化財保護行政上の大きな失点にもなりかねません。関連する文部科学省・国土交通省・文化庁、東京都、港区に対しては、「高輪築堤」が有している文化財(史跡)としての本質的価値の高さと、保存の必要性、保護の緊急性という視点から、国史跡の指定にむけて、事業者への助言・調整などを継続的かつ積極的に進めていくことを要望いたします。

2021年2月26日

日本歴史学協会

秋田近代史研究会
大阪歴史学会
関東近世史研究会
京都民科歴史部会
交通史学会
専修大学歴史学会
総合女性史学会
地方史研究協議会
中央史学会
東京歴史科学研究会委員会
東北史学会
奈良歴史研究会
日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会
日本史研究会
日本風俗史学会
文化財保存全国協議会
宮城歴史科学研究会
明治大学駿台史学会
歴史科学協議会
歴史学研究会

2021年02月26日

鳥取県米子市百塚88号墳の保存を求める要望書

 文全協は12月9日付けで、鳥取県米子市百塚88号墳の保存を求める要望書を関係機関に提出しました。百塚88号墳は、横穴式石室を有する全長26mの前方後円墳です。産業廃棄物最終処分場の建設にともない発掘調査されましたが、「記録保存」の名のもとに破壊される運命にあります。
 文全協はこの古墳の保存を求めます。残せる古墳、残すべき古墳です。ご支援、ご協力をお願いします。
                                                                               2020年12月9日
文化庁長官 宮田亮平様
鳥取県知事 平井伸治様
米子市長 伊木隆司様
                               文化財保存全国協議会
                                 代表委員 小笠原好彦
                                     橋本 博文

   鳥取県米子市百塚88号墳の保存を求める要望書

 鳥取県米子市淀江町小波地内に所在する百塚古墳群は、総数122基からなる大型の古墳群であり、弥生時代から奈良時代にいたる集落遺跡である百塚遺跡群とともに、淀江平野の貴重な歴史遺産です。また、国内最大級の弥生時代集落であり、古墳時代につながる墳墓が営まれた国史跡・妻木晩田遺跡にも近く、妻木晩田遺跡の後の淀江平野周辺の歴史の動向を考えるうえで注目される古墳群です。
 なかでも百塚88号墳は、古墳群内に現存する唯一の前方後円墳(全長26m)です。2020年6月からは、産業廃棄物最終処分場の建設工事に伴う発掘調査が実施され、古墳時代後期後半(6世紀後半)に位置づけられる横穴式石室・石棺と、鳥形の装飾をもつ須恵器がみつかっています。また、その墳丘には、全国的にも珍しく、妻木晩田遺跡で確認されたものと共通性の高い「土のう積み」の工法が確認でき、古墳の築造過程を知るうえでも貴重な成果が得られています。
 この古墳について、鳥取県および米子市当局は、10年前に実施した試掘調査の結果にもとづき、当初より「記録保存」をするという方針で、このたびの発掘調査を実施し、すでに墳丘の一部を削平し、横穴式石室・石棺は解体され、発掘調査も終了しています。そして、墳丘が残存した状態で、開発業者に引き渡すとのことです。
 しかし、この産業廃棄物最終処分場建設計画は、昨年秋に鳥取県知事が地下水への影響についての再調査を命じ、「調査の結果次第では、計画を白紙に戻す可能性がある」と定例記者会見で発言しています。そして、その調査結果がでるのは、来年の秋ということです。すなわち、本古墳にかかわる開発事業の実施がいまだ正式決定していない今の段階で、「記録保存」のための発掘調査がおこなわれたことは、文化財保護行政のあり方として、きわめて不適切であり、遺憾な判断であったと言わざるを得ません。加えて、今回の発掘調査によって、土のう積み工法という新たな知見が得られたことをふまえ、「記録保存」という方針は、見直されるべきものと考えます。
そのため、私たちは次の2点を強く要望いたします。

1.すみやかに現存する古墳の墳丘の保護措置をおこなったうえで、すくなくとも事業計画が正式決定するまでの間、古墳の保存・活用を視野にいれた協議をおこなうこと

2.文化財保護の原点に立ち戻り、地域の特質を物語る古墳の保護・活用をはかること

2020年12月09日

日本学術会議の新会員候補6名の速やかな任命を求めます。

 文全協常任委員会は、12月5日付けで標記の声明発表を決め、菅内閣総理大臣に声明文を送付しました。任命が見送られた日本学術会議の新会員候補6名の速やかな任命を求めます。
 なお、2020年11月6日には、国内の220余りの人文・社会科学系の学会が、任命見送りの理由の説明や6名の任命を求める共同声明を発表しています。

   日本学術会議の新会員候補6名の速やかな任命を求めます。
 
 文化財保存全国協議会(文全協)は、日本に残されている豊かな文化財を守り、学び、正しく活用して後世に伝えていくことを目的に、1970年に結成された全国組織です。各地の歴史学・考古学関係の研究者、教員、市民や文化財保護関係団体などを結集し、文化財の学習・保存活動を展開しています。
 日本学術会議が25期の発足にあたり新会員候補として推薦した105名のうち6名の任命を、菅義偉内閣総理大臣は拒否しました。これに対し、日本学術会議は、直ちに任命されない理由の説明と任命されなかった6名全員の任命を要望しました。
 しかし、今に至るも、菅内閣総理大臣は「総合的、俯瞰的」に判断した、と述べるだけで、任命拒否の理由を説明されていません。
 理由の説明のない任命拒否は、日本学術会議に対する政治介入だと言わなければなりません。日本学術会議は、日本学術会議法第3条に規定されているように「独立」の機関です。日本学術会議が推薦した会員の任命拒否は、法に定められたこの独立性を破壊するものであり、ひいては日本国憲法第23条に保障された「学問の自由」を侵害する行為であると言わざるを得ません。
 日本学術会議は「学者の国会」ともいわれ、政府に対して学問研究の立場から様々な分野にわたって政策提言をおこなっています。「文化財の保護と活用」に関しても、その内部に設置された史学委員会が2014年に「文化財の次世代への確かな継承-災害を前提とした保護対策の構築をめざして-」と題する提言を発表するなど、積極的な活動を展開されています。文化財を守り、学び、正しく活用して後世に伝えていくことを活動目的にしている当会にとっても、重要な指針となっています。
 当会は、こうした観点から日本学術会議のありように強い関心を持っています。当会は、菅内閣総理大臣による日本学術会議の新会員候補の任命拒否に強く抗議するとともに、6名の会員候補の速やかな任命を求めます。

  2020年12月5日
                          文化財保存全国協議会常任委員会

2020年12月05日

日本学術会議第25期推薦会員任命拒否に関する人文・社会科学系学協会共同声明

                             2020(令和2)年11月6日
 日本学術会議第25期推薦会員任命拒否に関する 人文・社会科学系学協会共同声明

 私たち人文・社会科学分野の104学協会(内、4学会連合を含む)および115の賛同学協会(内、1学会連合を含む)は、日本学術会議が発出した2020(令和2)年10月2日付「第25期新規会員任命に関する要望書」に賛同し、下記の2点が速やかに実現されることを強く求めます。

1.日本学術会議が推薦した会員候補者が任命されない理由を説明すること。
2.日本学術会議が推薦した会員候補者のうち、任命されていない方を任命すること。

104学協会名(省略)
115賛同学協会名(省略)

 上記共同声明に、文全協は発出団体として参加します。


 文化財保存全国協議会では、すでに文全協常任委員会名で声明「日本学術会議の新会員候補6名の速やかな任命を求めます」(2020年12月5日付、『文全協ニュース』227号所収)を発表し、菅義偉内閣総理大臣宛に送付しています。
 文全協事務局では、人文・社会科学系学協会共同声明については純然たる学会の共同声明であると考え、その参加を見合わせてきました。しかし、日本考古学協会会長・考古学研究会代表連名で、「日本学術会議推薦会員任命拒否に関わる人文・社会科学系学協会共同声明への参加ご案内」(2020年12月20日付)を受け、日本考古学協会に「人文・社会科学系学協会」の性格を問い合わせました。日本考古学協会事務局には丁寧な対応をいただき、人文・社会科学系学協会連合連絡会事務局にも照会いただいた上で、共同声明への参加に問題がないことを確認しました。
 以上の経緯を踏まえ、文全協事務局では、2021年2月28日、文化財保存全国協議会として共同声明に発出団体として参加することを決定し、各常任委員に連絡して了解を得ました。 (事務局)

2020年11月06日