「初代門司港駅跡」関連遺構の保存に関する要望書

                                2024年3月1日
文化庁長官 都倉 俊一様
北九州市長 武内 和久様
                              文化財保存全国協議会
                                代表委員 小笠原好彦
                                代表委員 橋本 博文
                              福岡県歴史教育者協議会
                                会 長  川上 具美

         「初代門司港駅跡」関連遺構の保存に関する要望書

 北九州市が「北九州市立地適正化計画」のあとを受けて策定した「門司港地区複合公共施設建設事業」を進めている中、先般、現門司港駅東側の建設用地内で発掘調査が行われ、「初代門司港駅跡」関連施設の基礎を示すさまざまな地下遺構がみつかりました。
 1891(明治24)年の構内図に照らしても寸分違わない位置に、機関車庫のコンクリート基礎と赤レンガの外壁、開業当時の駅舎の外郭石垣と、それに重複する形で築かれた2代目駅舎跡、また使用燃料廃棄場とみられる石炭ガラの集積もみつかり、まさに往時の九州鉄道起点駅の姿をほうふつとさせます。
 機関車庫は地形の変化に応じて基礎工法を変えており、建設技術の進化と変遷がみてとれ、近代日本を支える鉄道産業の歴史を物語る貴重な発見となりました。国の重要文化財に指定され、数年前改修工事を終えたばかりの門司港駅舎は北九州観光の目玉にもなっている人気スポットですが、「初代門司港駅跡」はこの原型として重要です。
 昨年の2023年11月19日の現地説明会では、鉄道ファンだけでなく、たくさんの門司区民や北九州市民、県内外の文化財関係者、建築設計技術者など、500人以上の見学者が訪れ、この遺跡に対する関心の高さを示しています。
 しかし、本調査区は門司区役所をはじめ、いくつかの公共施設の機能が統合・集約された新規高層建物の建設予定地にあるため、見つかった貴重な遺構は、その基礎杭埋設工事によって、ほとんどが壊されてしまうのではないかと危惧されます。
 「初代門司港駅跡」に始まる門司港駅は、現在九州鉄道記念館として公開している九州鉄道本社本館などとともに機能し、近代日本産業の動脈、頭脳となり、やがて世界遺産にもなっている官営八幡製鉄所の創設につながっていったと考えることができます。
 30年ほど前、東京の汐留遺跡で発掘調査された「旧新橋停車場」は、駅舎やプラットホーム、機関車庫、客車庫、転車台などがみつかり、現在、国指定史跡として駅舎も復元されています。
 また、近年では2019年に東京品川で高輪築堤とよばれる海を埋め立てて鉄道を通した遺構(基礎石垣)が、再開発工事中に約900mにわたって発見され、きわめて不十分ながら、その一部は2021年に「歴史上や学術的に価値の高い遺跡」として国の史跡に指定され、現地に保存されています。
 「初代門司港駅跡」関連遺構は、まさに明治日本の石炭産業を物流面で支えた原点ともいえ、世界遺産の構成資産にも匹敵する価値を有していると考えます。
 以上のことから、本会は、今回見つかった「初代門司港駅跡」の遺構を現地にて保存し整備して、後世に伝えるために必要な措置を講じていただきたく、下記のことを要望します。

                    記

1、今回の発掘調査で検出された「初代門司港駅跡」関連遺構を現地にて保存し、将来的には現門司港駅舎、九州鉄道記念館とともに一体感のある近代遺産として整備すること。
2、現在進行中の「複合公共施設建設事業」用地については、遺跡保護の観点から共存は難しいと考えるため、抜本的に見直すこと。
3、「初代門司港駅跡」関連遺構を、北九州市観光の目玉となっている「門司港レトロ」を構成する近代建造物群ともあわせて有機的に整備をしていくこと。
4、門司港駅周辺地下にまだ残っている近代遺構群の把握のための確認調査を継続的に行い、その成果を門司区民、北九州市民に随時公開すること。

2024年03月03日