仁和寺前ホテル計画地の全面的かつ慎重な発掘調査の実施を求める要望書

                                 2023年10月5日

京都市長 門川大作 様
担当:京都市文化市民局文化芸術都市推進室文化財保護課 御中

                    文化財保存全国協議会
                      代表委員 小笠原好彦、橋本博文
                    京都・まちづくり市民会議
                      代表 片方信也、大屋 峻、中林 浩、中島 晃
                    世界文化遺産仁和寺の環境を考える会
                      共同代表 山根久之助、桐田勝子
                    広く地域住民の声を聞き、
                       仁和寺門前のより良いあり方を考える住民の集い
                      代表 大森直紀

    仁和寺前ホテル計画地の全面的かつ慎重な発掘調査の実施を求める要望書

 京都市右京区にある世界遺産・仁和寺の門前に、現在、地下1階、地上3階建て、延べ面積5818.88㎡のホテル建設が計画されている。
 仁和寺の門前は、平安時代中期に後三条天皇が四円寺の一つである「円宗寺」を建立した場所として知られているが、最近になってホテル計画地から南東にある場所で計画された住宅建設に先立って行われた発掘調査により、円宗寺が建立された時期に相当する整地層が確認され、円宗寺のものと考えられる大量の瓦の出土が報告された。
 円宗寺は、四円寺の中でも最大の規模を誇ったと伝えられており、国家的な宗教儀式が複数回行われるなど、大寺院として複数の史料に名が残っているものの、これまでその実態は謎に包まれていた。しかし、令和4年11月28日から12月28日にかけて、京都市文化財保護課によって実施された発掘調査により、平安時代の整地層で溝状遺構が確認され、「京都市内の埋蔵文化財調査速報」NO.32(R4-10)によれば、その遺構は「円宗寺跡」で「今後、さらなる調査の進展が期待される」と指摘された。
 当該ホテルの計画地では、平成30年に部分的な試掘が行われ、当時「円宗寺跡」の遺構が検出されなかったとされたが、令和4年の発掘調査により「円宗寺跡」の遺構が新たに確認され重視されたことは、さきに述べた通りである。
 今回のホテルは、現市長のもとで上質宿泊施設誘致制度を適用して、延べ面積の特例緩和によって建設許可が出されているとはいえ、京都市の埋蔵文化財の調査がおざなりにされるようなことがあってはならないことはいうまでもない。
 世界的な歴史都市であり、世界遺産に登録されている仁和寺の門前において、文化財行政がないがしろにされることは到底許されない。
 以上のことから、文化財保護法の理念を尊重する私達は、京都市が当該ホテル計画地の全面的で慎重な発掘調査を実施することを要望する。
                                  以上

2023年12月24日