広島県安芸郡府中町下岡田遺跡の文化財保存対策を求める要望書
2025年10月20日
文化庁長官 都倉 俊一 様
広島県知事 湯﨑 英彦 様
広島県教育長 篠田 智志 様
府中町長 寺尾 光司 様
府中町教育長 新田 憲章 様
文化財保存全国協議会
代表委員 橋本博文
代表委員 澤田秀実
広島県安芸郡府中町下岡田遺跡の文化財保存対策を求める要望書
広島県安芸郡府中町石井城二丁目・城ヶ丘に所在する下岡田遺跡は、1953年から2017年まで11回にわたって発掘調査され、官衙遺跡としての性格と重要性が明らかになっています。そして、2021年3月には、安芸駅家の可能性とともに山陽道の交通史研究における学史上の意義が高く評価され、史跡に指定されました。しかるに、この度のアパート建設は、誠に遺憾な出来事と言わざるを得ません。遺跡地内の建設区域は、未指定区域と承知していますが、これまでの調査で正殿が想定される官衙跡の中心部にあたることは明白で、今後の史跡の保存活用に与える影響は極めて大きいものと考えられます。とりわけ、今回の開発行為に伴う十分な追加調査がなされたのか、地下遺構や景観に影響を与えていないかとの疑念は尽きません。
この下岡田遺跡は史跡指定後の2024年3月に府中町教育委員会によって『史跡下岡田官衙遺跡保存活用計画』が策定され、本遺跡の保存管理、活用、整備の基本方針が示されました。その中には「第7章 保存(保存管理)」では、「適切な保存環境の維持、毀損等の防止(中略)を講じる」「史跡指定地内外の一体的な保存を推進していく」(64頁)と謳っています。また、これらに先立って2021年3月に広島県教育委員会が策定した『広島県文化財保存活用大綱』「第2章 目指す将来像」では、「文化財単体ではなく、自然環境や周囲の景観、地域の歴史、伝統的な活動などを一体的に捉えて保存・活用を図」ること(61頁)が明示されています。さらに課題として「未指定文化財等の把握と保護促進」を掲げ、「地域や市町と連携して文化財を総合的に保存する具体的施策を検討する必要」を示しています(64頁)。
このような計画、大綱がありながら、なぜそれらが粛々と遂行されず、今回、下岡田遺跡においてアパートが建設されようとしているのか、甚だ疑問ですが、その背景として、史跡を活かした町づくりといった、府中町が行政として取り組むべく都市計画上の具体的施策の不在や、地権者を含む住民とのコミュニケーション不足が一因ではなかったかと思料しています。
史跡=文化遺産の活用によって住民の皆さんが地域の歴史を正しく理解し、地域に愛着を深めることが、将来に向けた町づくりに繋がると考えますが、府中町では下岡田遺跡の保存活用が不可欠だと考えます。また、住民の皆さんと連携し、下岡田遺跡を地域の文化遺産として守り育てていく必要があります。
以上のことから私たち文化財保存全国協議会は、次の点を要望致します。
記
1 アパート建設を白紙撤回するよう、改めて地権者に誠意をもって働きかけること。
2 『史跡下岡田官衙遺跡保存活用計画』に基づき、計画した諸事業を誠実に実施するとともに、未指定地での官衙関連遺構の把握を含めた遺跡全体の具体的な対応策を新たに策定し加えること。また、長期的な展望として、老朽化した建物の撤去と史跡の保全復旧についても保存活用計画に加えること。
3 策定した保存活用計画、対応策が長期な展望をもって確実に実行できるよう、複数の専門職員を配置し、開発部局と文化財保護部局との連携強化を含めた行政組織の整備、拡充を図ること。
4 遺跡情報の周知徹底を図るとともに、史跡の保存活用を担う市民団体の育成に努めること。
以上




