太田市立藪塚本町歴史民俗資料館の存続に関する要望

                              2021年3月22日
太田市長    清水聖義様
太田市教育長  恩田由之様
太田市議会議長 久保田俊様

                           文化財保存全国協議会
                             代表委員 小笠原好彦
                             同    橋本 博文

   太田市立藪塚本町歴史民俗資料館の存続に関する要望

 御地太田市は、東日本最大の前方後円墳、太田天神山古墳や単独の埴輪では唯一の国宝、太田市飯塚出土挂甲武人埴輪(東京国立博物館所蔵)、北関東の古墳時代前期の指標となる石田川遺跡出土土器群など、国内外に誇る埋蔵文化財を多く有することで知られています。その貴市では、当然あってしかるべき考古学系の博物館として市町村合併前の個人寄贈の藪塚本町歴史民俗資料館のみを受け継いできました。
 ところが、このたび施設の老朽化や障がい者に利用しづらいこと、新型コロナ禍での歳入減が心配される財政事情の中での来館者増が見込めないことを理由に、ごく限られた地元(旧薮塚本町でも『湯之入』・『三島』地区)の区民のみに一方的に資料館の閉館のおしらせを回覧させました。それに危機感をもった地元、東毛考古学サークルはにわの会では、資料館の存続を願う要望・陳情書を2021年1月21日付けで貴職宛に提出しました。その中で、廃館の撤回と太田市文化財保護審議会が閉館と決した議事録の公開、市民のパブリックコメントを募集することなどを要望しています。
 その後、マスコミでは地元紙、上毛新聞が同年2月10日付け朝刊で「郷土史伝える場廃館」「地元団体見直し訴え」の見出しで報道し、朝日新聞も同月26日付け群馬版で「太田歴史民俗資料館利用低迷で廃館方針―考古学者ら「待った」」の見出しで報じました。そこには、市側からの回答にある廃館後の資料の、近世尊皇攘夷思想家を顕彰する施設、高山彦九郎記念館への移転・間借り展示への批判が掲載されています。
 一方、これらマスコミの報道を受けた県民・市民は敏感に反応し、地元紙、上毛新聞の3月2日付けの「待ってほしい歴史資料館廃止」や同紙3月6日付けの「藪塚の資料館廃館を憂う」などという館の存続を願う声を寄せています。
 それに続く上毛新聞3月9日付けでは「市議会委員会で廃館の経緯報告」と題して、市議会市民文教委員会協議会で「パブリックコメント」を実施すべきだという委員の意見に対して、市は「今回は廃館の報道後も反論の声が出ていない」と述べ、実施しないとしたと報じています。
 以上の一連の経緯は、行政が市民の声を無視し、黙殺しているとしか言いようがありません。そもそも合併後、太田市は当館の改修などにお金を掛けず、バリアフリーや入館者増のための取り組みを怠り、努力義務を果たしていません。
 そこで以下、別紙資料を添えて要望します。
1.資料館の廃館を見直し、存続を図ること。
2.施設を利用し易くするための改修を図ること。
3.名称を全市的な施設として「太田市考古・民俗資料館」とすること。
4.今後の運営のため、識者に地元小中学校関係者、PTA、マスコミ関係者、観光関係者、市民(公募を含む)などを加えた運営協議会を組織すること。
5.館活動の活性化のため市民ボランティアの制度を導入すること。
 今後、当館が文化の発信、学び、観光の拠点として、地域に誇り・夢・活気を与える施設として発展することを切望します。

2021年03月22日