「築地地区まちづくり事業」に関する環境影響評価における東京都旧跡「浴恩園跡」への対応について(要請)
2025年7月11日
東京都環境影響評価審議会
会長 片谷教孝 様
第二部会 部会長 宗方 淳 様
文化財保存全国協議会
代表委員 橋本 博文
同 澤田 秀実
「築地地区まちづくり事業」に関する環境影響評価における
東京都旧跡「浴恩園跡」への対応について(要請)
貴審議会は事業者(築地まちづくり株式会社)より提出のあった「築地地区まちづくり事業 環境影響評価調査計画書」を受理され、これを去る6月30日開催の令和7年度第4回総会において今後、貴審議会第二部会での調査および審議とすることを決められました。
当該事業が計画されている旧築地市場跡地は江戸遺跡地区に含まれ、江戸時代には大名屋敷が集中した地域ですが、中でも老中首座として寛政の改革(1787-1793)を断行した松平定信が老中を辞した後、一橋家から分与された白河藩下屋敷に「春風の池」「秋風の池」二つの潮入りの池を設け池泉回遊式庭園として整備した「浴恩園」は多くの文化人が訪れ、天下の名園として全国に知られたものです。当該地域は明治期には海軍関連の施設となり、1935年以降、2018年まで長く築地市場として用いられていましたが、浴恩園については1926年に史跡、1955年の都条例の改正により、旧跡「浴恩園跡」として現在も東京都指定文化財となっています。
今回の「築地地区まちづくり事業」を進めるにあたり、東京都教育委員会は旧跡・浴恩園跡の実態を把握するために2021年1月から2月にかけて当該地区での試掘調査を行いました。その結果江戸時代の遺構、遺物が残っていることが判明したため、同年11月10日付で東京都都市整備局、東京都教育委員会、東京都埋蔵文化財センターの三者で協定を結び、同年11月から2022年にかけて東京都埋蔵文化財センターが浴恩園跡の遺存状態を確認するための予備調査を行い、2023年3月に調査報告書「都旧跡・浴恩園跡」をまとめました(上記、予備調査実施に至る経過も同報告書からの引用です)。
それによると、浴恩園との関連があるものとして、調査地点A区における春風の池の一部と西側石積み護岸、尾張藩屋敷との境界とみられる往還(道)と溝、①区における東西52mにおよぶ秋風の池の一部と池の東側境界、同池の中の島の範囲、④区における秋風の池の一部および植栽痕、⑨・⑩区における潮入り石積み水路(近代の改修あり)などが確認され、また浴恩園と関連する可能性があるものとしてA区の竹樋および木樋、①区の秋風の池東岸の礎石建物跡および中の島内の硬化面、②区の西側往還方向に延びる暗渠などが列挙されており、これらは浴恩園の池泉回遊式庭園が奇跡的に残されている可能性が高いことを示すものです。
上記のような経過を踏まえて事業者は、市計画決定などの過程において、貴審議会はもとより、都民をはじめ関係者に周知を行うとともに、予備調査の結果を踏まえた精緻な調査によって浴恩園跡の全貌を明らかにし、当該整備計画を見直していく必要があります。
しかるに今般、事業者から提出された「環境影響評価調査計画書」の史跡・文化財の一覧に「都旧跡・浴恩園跡」の文字すらなく、これまで実施された試掘調査や予備調査の結果についても、上記報告書にあるような浴恩園との関連性を記していません。これは事業者が関係者の目から「旧跡・浴恩園跡」の存在をそらし、試掘調査や予備調査の結果が「大した成果がない」との印象を与えるよう意図したものとして看過できませんし、事業者にこうした「計画書」の作成を許した東京都都市整備局や教育委員会の指導の在り方にも疑問を呈さざるを得ません。
以上のことから貴審議会が「築地地区まちづくり事業 環境影響評価調査計画書」を審議するにあたり、特に史跡・文化財に関し、事業者および事業者の指導にあたる東京都、東京都教育委員会に対し下記の対応をとるよう、知事に答申をすることを要請します。
記
(1)予測項目「史跡・文化財」のなかに「都旧跡・浴恩園跡」を明記すること。
(2)事業計画地内で浴恩園跡の遺構確認のため実施した予備調査については、同調査についての東京都埋蔵文化財センター報告書「都旧跡・浴恩園跡」にある、予備調査実施に至る経過、発掘成果の浴恩園との関連性などの評価を明記すること。
(3)当該地区の埋蔵文化財調査については、東京都埋蔵文化財センターが責任をもって調査を担当すること。
(4)調査経過の公開、結果の客観的な評価を担保するため、外部専門家からなる「(仮称)築地市場跡地埋蔵文化財調査検討委員会」を設けること。




