「都旧跡浴恩園跡」に関する要請

                                  2025年1月20日
東京都知事 小池 百合子 様
東京都教育委員会教育長 坂本 雅彦 様
                              文化財保存全国協議会
                                代表委員 澤田 秀実
                                代表委員 橋本 博文
           「都旧跡浴恩園跡」に関する要請

 築地市場跡地に残る都旧跡「浴恩園跡」については、昨年6月23日、文化財保存全国協議会第54回市川大会において、その保全と再生を求める決議を行い、本協議会は7月10日付書面をもって貴職に対し送付いたしました。
 大会決議にあるように、浴恩園は老中首座として、寛政の改革を断行した松平定信が老中を辞した後、一橋家より分与された築地の一画に下屋敷・庭園として再整備したもので、春風の池、秋風の池の二つの潮入りの池を中心とする池泉回遊式庭園です。春の桜、秋の紅葉をはじめとする四季折々の花木、草花を愛でる天下の名園として知られていました。文政12年(1829)の江戸大火によって館など建物は焼失したものの、回遊式庭園は明治期の海軍関連施設が置かれた時期にも残り、1935年の築地市場建設に伴い埋め立てられましたが、当該の場所は現在も東京都指定の旧跡「浴恩園跡」(1926年に史跡指定されたものが、1955年の都条例改正により旧跡指定)となっています。
 東京都は築地市場の豊洲移転後の「築地まちづくり」にあたり、都旧跡「浴恩園跡」の現状を把握する必要から、残されている江戸末期から明治期の絵図や測量図をもとに、11区(A区及び①~⑩区)を選び予備調査(発掘調査)を実施しました。その結果、春風の池北西端の石積み護岸(A区)、秋風の池の東側と中の島の範囲(①区)、秋風の池の南端部(④区)などが確認され、二つの潮入りの池を中心とする回遊式庭園が、ほぼ絵図や測量図通り良好な状態で残されている可能性が高いことがわかりました。また現在も進められている築地市場跡地全体の試掘調査では浴恩園関連遺構だけでなく、尾張藩蔵屋敷舟入の大池をはじめとする大名屋敷関連遺構や幕末の海軍操練所跡と関連すると見られる護岸跡などが確認されています。
 大会決議に対しては、都および都教育庁から8月20日付で「(浴恩園跡について)法令等に基づき適正に対処する」旨の回答を頂きました。しかしながら、東京都は上記予備調査継続中の2022年(令和4年)3月に「築地まちづくり事業」実施方針を決定し、この事業方針に基づき、昨年4月19日に三井不動産を代表とする企業グループを事業者として約5万人収容の屋根付きスタジアムや高級ホテルやマンション、オフィスビルなどを建設する、従来型再開発事業を進める方針を発表しています。このような都の方針決定には、上記予備調査の結果が全く考慮されていないことは明白であり、これは「文化財は国民共有の財産である」という文化財保護の基本理念に反するものと言わざるを得ません。本協議会は貴職にこの点を強く指摘し、改めて以下の事項を要請するものです。

              記
1.都旧跡「浴恩園跡」については東京都埋蔵文化財センターによる広範囲の発掘調査を実施して、「浴恩園跡」の全体像を明らかにし、その発掘成果を都民をはじめ全国民に公開すること。

2.上記の発掘調査成果を踏まえて「築地まちづくり計画」を市民参加で作成し直すこと。

2025年02月09日