本会では、文化財保存運動の先駆者であった故和島誠一氏の科学的精神とその思想に深く学び、21世紀における文化財の保護、活用および普及活動の飛躍的な発展を期待して、2000年に「和島誠一賞」を制定し、広く全国で文化財の保護、活用、普及などに関連して顕著な活動をおこなった個人・団体を表彰している。
2026年3月28日に開催した選考委員会で、下記の選考委員と協力会員からの候補者推薦をもとに慎重に審議した結果、個人部門は菊池実氏(群馬県)を、団体部門は「NPO法人加曽利貝塚博物館友の会」(千葉県)を第27回和島誠一賞の受賞者・団体候補とすることに決定した。その後、それぞれのご快諾を得て受賞が決定した。
【選考委員】橋本博文(選考委員長)、澤田秀実、和島明、杉田義、大竹憲昭、
勅使河原彰、高柳俊暢、小貫充、出原恵三、松田度
【選考協力会員】岡山真知子、菊地真、木村英祐、小泉玲子、後藤祥夫、高瀬克範、
坪田幹男、森田勝三、橋本達也、吉田広
表彰者の紹介
個人部門
菊池 実(きくち みのる)氏
菊池実氏は、公益財団法人群馬県埋蔵文化財調査事業団に勤務して埋蔵文化財保護行政に関わりながら在野の研究者として考古学研究を進めてきた。
この間、高崎市の群馬の森内に在る陸軍岩鼻火薬製造所や陸軍前橋飛行場など群馬県内の戦争遺跡を考古学的手法によって詳細に調査するとともに、全国の戦争遺跡にとどまらず、防衛省防衛研究所や国立国会図書館憲政資料室、米軍などが所蔵している戦史資料を総合的に調査・研究するなど、これまで未開拓であった戦跡考古学の研究を先駆的に進め、『近代日本の戦争遺跡研究―地域史研究の新視点』などを通して、その研究の確立と発展に努めてきた。
1997には戦争遺跡保存ネットワークの結成に参加し、現在は同・共同代表として、全国の戦争遺跡保護団体の交流を促進し、それを束ねて中心となって活躍している。具体的には、戦争遺跡の調査・研究の推進や情報交換、行政への保存の働きかけ、毎年夏のシンポジウムの開催などに奔走している。また、空襲・戦災を記録する会全国連絡会議全国幹事としても活動している。
一方、中国黒竜江省ハルビン師範大学、重慶の四川外国語大学教授として日中の文化・学術交流の促進に努めるかたわら、新潟大学や立正大学などでも非常勤講師として後進の指導にもあたってきた。
その戦争遺跡の調査・研究・保存に果たした業績を高く評価し、第27回和島誠一賞を贈り、表彰する。
群馬県在住 生年 1954年
顕著な業績、著書・論文等(発行所、発行年)
『近代日本の戦争遺跡―戦跡考古学の調査と研究』青木書店、2005年
『戦争遺跡の発掘―陸軍前橋飛行場』新泉社、2008年
『近代日本の戦争遺跡研究―地域史研究の新視点』雄山閣、2015年
『しらべる戦争遺跡の事典』共編著、柏書房、2002年
『続しらべる戦争遺跡の事典』共編著、柏書房、2003年
『前橋空襲80年』共著、みやま文庫、2025年
その他、昨年第二次世界大戦終戦後80年の節目の年を機に大月書店から出版の予定されている
『決定版 日本の戦争遺跡』2026年の編集・執筆も担当している。
以上の著書の他に、戦争遺跡に関する論文などが多数ある。
団体部門
NPO法人加曽利貝塚博物館友の会(千葉市)
当会は個人会員97名、団体・法人会員7社から構成される。活動年数は今年で丁度60年と長期にわたる。
同会は1963年、加曽利貝塚北貝塚の破壊危機のもとで発足した「加曽利貝塚を守る会」(会長武田宗久氏)を前身とする。3年後の1966年、同貝塚が国史跡に指定され、遺跡の保存という所期の目的を達成したことにより発展的に解消されたが、同年11月に開館した加曽利貝塚博物館を支援する目的で新たに「加曽利貝塚友の会」が結成された。その後、2017年に加曽利貝塚が国特別史跡に昇格する情勢のなかで、前年の2016年に現在の「NPO法人加曽利貝塚博物館友の会」となった。
加曽利貝塚博物館では、春・秋の縄文まつり、火起こし・組ひも・工作・縄文生活体験などの体験学習や紙芝居、園内ガイドツアー、自然観察ワークショップ、夏休み縄文ウィーク、加曽利JOMONウオーク、縄文講座など様々な活動をおこなっている。そうした博物館活動を当会は加曽利貝塚土器づくり同好会や加曽利貝塚ガイドの会など他団体と協力し、サポートしながら、自らも県内外の博物館・埋蔵文化財センターなどの施設見学、縄文時代遺跡の見学会、縄文時代をテーマとする講演会などを定期的に年6回以上も精力的に実施している。そのことによって、加曽利貝塚が地域の歴史学習の場だけでなく、加曽利貝塚を含む坂月川一帯の都市近郊の貴重な緑地空間としての環境保全、自然観察や憩いの場としても活用されることに大いに貢献している。こうした中での会報『貝塚』の年2回の刊行も評価される。
発足時の中心メンバーである武田宗久氏に関わる資料の整理・公開活動にみられるように、加曽利貝塚保存運動の経緯や運動に関わった人々の思いを継承し後世に伝えていることも特筆される。特別史跡指定に当たって、遺跡発見以来の歴史も遺跡の価値となることが認められた。このことは全国の遺跡保存運動にとって極めて重要な意義を持つものと評価される。また、イボキサゴ採取会と土器づくりの会で製作した復元縄文土器とをコラボして縄文食を復元する市民主体の壮大な実験は遺跡の活用を図る上で指針ともなりうるものと言えよう。
以上、NPO法人加曽利貝塚博物館友の会の博物館活動を支える文化財保存活動・啓発活動を顕彰し、ここに和島誠一賞を贈る。
1966年結成
顕著な業績、著書・論文等(発行所、発行年)
会報『貝塚』(1984年創刊、年1回の発行で現在まで42号)
絵葉書、遺跡マップ、縄文カルタの製作




